購入後わずか13時間で自転車を盗まれた話

最近、自転車の調子が非常に悪かったので、
コメリで新しい自転車を買った。19時半頃だった。

ワインレッド色のママチャリだった。

その後、家に帰って深夜3時まで大掃除をした。


今朝は大学が1限〜3限だった。

1限は8時30分から始まる。
だが俺は8時20分まで寝ていても大丈夫。

なぜなら、買ったばかりの自転車があるから⋯!

あっという間に教育学部棟前に着き、自転車を停める。

駐輪場は意外と埋まっていたが、
空いているところを見つけて停めた。


もちろん新品なので鍵はしっかりかける。


2限が終わり、お昼になった。
友達と、大学のそばにあるお弁当屋に向かう。

俺は自転車で行こうと思ったが、
友達は「近いし歩いていこうよ」と提案してきた。


この提案を断って 自転車に乗っていれば···


今はそう思わずにはいられない。


あの時「自転車で行こうかな」と思ったのは

虫の知らせ……… いや……

……自転車の知らせ、だったのかもしれない。


大学の講義室で弁当を食べて、3限が終わったのは14時半。

昨日、深夜3時まで大掃除をしていたから睡眠時間が足りていない。講義中も眠かった。

早く帰って寝たい。

俺は駐輪場にあるワインレッドの自転車に鍵を差し込んだ。


………おかしい。鍵が回らない。


よく見ると、サドルの高さが違う気がする。
少し年季が入っているようにも見える。

自転車を間違えた…?

しかし、周辺を探してもワインレッドの自転車は他に無い。

おかしい。この自転車じゃないはずがない。
俺が他の場所に停めた可能性はない。
なのに鍵が回らない。

コメリに電話をかけて、防犯登録の番号を聞いて確認してみると、そのワインレッドの自転車は自分のものではないことが確定してしまった。

どういうことだ。頭がおかしくなりそうだ。

俺の自転車は違う人の自転車になっていて、俺の自転車は無くなっていて、なのに鍵はあるし、自転車が無いはずはないのに、俺の自転車はない。

1時間近く、教育学部棟周辺の駐輪場を探し回った。
しかし無い。本当に無い。これ以上探しても無い。
………家に帰るしか無い。

いや、実は今朝は大学に歩いて来ていたんだ。
自転車は家に停めてあるんだ。
鍵だけ間違えて持ってきたんだ。

そんな自己暗示も虚しく、自転車は家にも無かった。

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盗まれたことを受け入れるしかなかった。

もう俺に出来ることは、警察に連絡することだけだった。

緊急を要しない時は、110番ではなく#9110 にかけるといいらしい。

電話口で警察に事情を説明する。

「自転車の保証書はありますか?」と警察に訊かれた。

実はない。

昨日の大掃除で捨てたことをはっきりと覚えていた。

まさか自分の自転車が盗まれるとは思わず、捨ててしまったのだ。

ましてや購入後わずか13時間で盗まれるなど、

誰が思っただろうか。いや、誰も思っていない。


しかし幸か不幸か、昨日の今日の出来事だったので

防犯登録の番号はコメリから教えて貰えたし、

それさえ分かれば大丈夫とのことだった。


警察も「昨日買ったばかりの自転車の保証書を捨てたバカが、昨日買ったばかりの自転車を盗まれてやがる」と内心めっちゃくちゃ笑っていただろう。


最寄りの交番に被害届を書きに行くことになった。

最寄りとは言っても、地味に遠い。
大きな坂をくだり、駅の中を突っ切って反対側にある。

なぜ俺はこんな無駄な時間を…と思わずにはいられない。


交番に着くと待っていたのは2人の警察官。

1人はアンガールズの山根、もう1人はハナコの岡部に似ていた。

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山根の方は新人らしい。
岡部に色々指示されながら、山根が俺に質問をする。

山根「昨日買ったばかりという自転車ですが…最後に見たのは何時頃ですか?」

俺「8時30分ですね…」

山根「あ〜じゃあ一限に乗っていった感じだ!」

俺「あ、そうっすね…」

山根のテンションが意外と高くて、少し腹が立った。
「災難でしたねぇ」みたいな感じで接してくれ。


山根「それと、盗まれた物の時価ですね。自転車を買った当時の価格は幾らでしたか?」

俺「10800円でしたよ。さすがに覚えてますよ!昨日なんで!!!10800円ちょうどです!!」

山根「フフッwwwそうですよね、じゃ現在の価格でも10800円と…」

俺「当たり前じゃないすか!!」


いやコントか!!!!!!!!!!!!!!!

お前と漫才やってる場合じゃねんだよこちとら!!!!!!!!!!

俺はお前の相方じゃねえよ!!!!!!!

俺は田中じゃねえんだよ!!!!!!!!!!!!!


山根は、たどたどしい手つきで被害届を書き終えた。

もし、盗まれた自転車を自分で見つけた場合、被害届を取り下げるためにまた交番に来ないといけないらしい。

何が悲しくて、またこんな無駄な時間を繰り返さなければならないのか…
というか、自分で見つけるなんて絶対不可能だろ…


そう思いながらも、

駅の駐輪場でワインレッドの自転車を見つけては

防犯登録の番号を確認している自分がいた。

買ってから13時間で自転車を盗まれるだけでもなかなか珍しいことなのに、帰り道で見つかったら奇跡だ。


帰り道、偶然にもこんな張り紙が目に入った。


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涙が出ちゃうよ。やめてくれよ。

こんなに悲しいことはないよ。

10800円…安い焼肉なら3回は行ける金額だ。


もう少し大学周辺を探してみようと思う。
近くに乗り捨てられているかもしれない。

音楽でも聴きながら、散歩がてら探します。
もちろん聴くのは、安全地帯で、ワインレッドの心。


窃盗は犯罪です。絶対にやめましょう。